2008年02月16日

SHM-CD盤「三月の水」を聴いてみた。(追記あり)

この間の「SHM-CDって本当に音良いの?」の続編です。注文していたCDが AMAZONから届いたので比較試聴してみました。

[総評]
メーカーは「SHM-CDが高音質である」というマヤカシを吹聴するのはやめましょう。マスターが違うんだから音質が違って当然です(音楽ファンは騙せても僕は騙されませんよ)。
しかも2007年SHM-CD盤は1998年盤と比較して音楽的な劣化が著しい(逆、ではありません)。

[比較方法]
マスターが同一であるかどうかを検証するため、1998年盤と2007年盤をエラー訂正しつつ無圧縮でリッピング。Apple PowerMac G5 + Digidesign 192I/O + iTunesで試聴。

[問題点]
リマスタリングを行っていながらそれを表記せず「SHM-CDだから高音質だ」という宣伝は卑怯であると思います。しかも「高音質」かどうかも怪しいですし。

マスターテープこそ共通だと思われますが、07年盤は明らかにマルチバンドコンプを通っています。聴感では6dBほど音量が上がっています。
だが、それ故空間情報が欠落してしまっているのです。もし疑われるのであれば「イザウラ」で右チャンネル側に居るミウシャのリバーブと定位を比較してみて下さい。07年盤では奥行きが無く平面的。見事に張り付いています(←ここ ファンが「生々しい」と錯覚しやすい罠)。
一方ローは暴走気味でギターの6弦を弾いた時の余韻が上のコードと干渉しています。それは小型スピーカーで聴けば一層良く分かります。
「音が籠もっている」と評判が悪い98年盤ですが、それでもガット弦に爪が当たる音ははっきりと聞こえます。07年盤はまるで聞こえません。それはコンプがアタック成分を潰しているせいかも知れませんし、この約10年の間にマスターテープの劣化が進んでいるせいかも知れません。
ドンシャリなEQに加えギリギリまでレベルを突っ込んだ「現代風」な音作りのため、リップノイズはデジタルクリップの様に聞こえるし、声も押さえつけられて部分的に歪んでいます。

[私感]
大体何であんなに個性的なジョアンの音源を他のアーティストと同じような音圧に合わせなきゃならんのだ?と思う。音量が小さかったらリスナーがステレオのボリューム上げればいいだけじゃない!と思う。
ウェンディー・カルロスがバリピッチを使って音程下げてわざわざ「沈んだ」感じに仕上げてるのに今風の派手なリマスタリングをするっていかがなものか?と思う。
もはや当時のアナログ盤から音源起こしした方が音良いんじゃないか?と思う。
もうね、歯がゆいったらありゃしない!

(追記)
ご親切な方に「三月の水」2007年SHM-CD盤のマスターは、2003年のルビジウム・クロック・カッティング盤と同一です、とご指摘を頂きました。
よって今回の「リマスタリングの有無に関して嘘つくな!」関係の記述は僕の早とちりでした。メーカーの方、関係者の方申し訳ありませんでした。
ただし、このマスタリング自体があまり良くないと思っています(もちろんSHM-CD自体の否定ではありません)。


SHM-CDと通常盤のCDを比較してみた。(2008/03/17)へ続く。

関連記事:
リマスタリングの功罪(2007/03/04)
アナログメディアの音はなぜ良いのか?(2007/01/18)
Vari Pitchか!(2006/12/16)
posted by miduno at 22:56| Comment(3) | TrackBack(0) | オーディオ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
前略 水野さまの御意見に納得できるところと、そうでもないところがあります。納得できるのはリマスタリングの酷さです。三月の雨は高校時代に初めてLPで聴いた思い出深いアルバムで、わたしも買いました。さて、SHM-CDの音質云々ですが、多くのリリース作品は通常盤で使われているメタルスタンパーをそのまま使っています。それは経費節減も理由なのでしょう。三月の雨でいえば、SHM-CDのスタンパー刻印はUCCU-5052になっていて、これは通常盤の規格番号そのもので今でも入手可能なはずです。その通常盤とSHM-CDを比較することが客観的な評価となるのではないでしょうか。私は過去にCDプレスに関わっていましたから、両者の製造上の違いはスタンパー取付時の偏芯以外にないと考えます。両方ともビクタープレスです。できれば、通常盤CDとSHM-CDの音の違いを、もう一度水野さまの言葉で書いて頂ければ嬉しいです。あ、私はSHM-CDの関係者ではありませんから...。前述した条件のディスクを数作品ほど集めて自分で所有する複数台のプレクスターで調べましたら、通常盤CDよりもSHM-CDのほうが明らかにC1エラーが少ないです。グラフで比較するとC1エラーは通常盤の半分以下程度です。もちろん、両者ともC2エラーなどは皆無です。それが高音質云々の証左となるかは話が別ですが。敬具
Posted by ティエムアール at 2008年02月26日 00:28
「三月の水」は水野さんがお持ちのポリドール時代に発売した初CD(1998年04月15日、POCJ-2557)の後、
ユニバーサルになってから初ハイ・ビット化のデジタル・リマスタリング盤が発売されており(2002年07月24日、UCCV-3003)、
比較をしたSHM-CDの元は後のリマスタリング盤だと思います。
厳密に言えば、ルビジュウムクロックを導入した2003年04月23日発売のでしょう。

現在入手可能な定価1500円のCDは2005年9月14日発売のUCCU-9073か2006年4月5日発売のUCCU-9201ですので、
どちらかを購入して聴き比べるのをお薦めします。
Posted by 変わり者 at 2008年02月26日 06:49
ティエムアールさま
変わり者さま

非常に明瞭かつ的確なご指摘ありがとうございます。確かに今回の比較で分かったことは「マスターが違う点だけ」であり、「SHM-CDそのものの音質」について客観的な判断がなされていませんでした。下調べ不足を含め反省しております。

幸いお二方が教えて下さった2003年4月23日発売の盤(UCCU-5052)の新品が入手出来そうですので届き次第検証させて頂こうと思っています。結果は追ってご報告いたします。
Posted by miduno at 2008年02月26日 12:39
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